はじめに
南アルプス市の緑の基本計画について
「南アルプス市 緑の基本計画」は、南アルプス市の緑についての将来像や緑のまちづくりの基本的な方向性を定めたもので、今後、市民・企業・行政が協働で取り組む緑のまちづくりに関する指針となるものです。
このプランは、市民の皆様と一緒に考えながら策定を進めてきました。先人から受け継いだ「美しいふるさとの自然や緑」を、次代を担う子供たちに継承していくことは、今を生きる私たちの重要な役目といえます。私たち一人ひとりがこのふるさとに愛着と誇りを持ち、みんなが力をあわせて「美しい山々と清流と緑のまち・南アルプス市」の実現を目指し、次代へ伝えていきます。
「緑の基本計画」について
「緑の基本計画」とは
緑の基本計画とは、「都市緑地法」(平成16年6月「都市緑地保全法」が改正)に基づき、市町村が策定する総合的な「緑地の保全および緑化の推進に関する基本計画」のことで、次のような特色があります。
- 緑に関する市の総合的な計画
緑の整備は、都市公園の整備だけでなく、緑地や清流、生態系、郷土景観の保全、緑化活動、緑の普及・啓発や市民・企業・行政が連携した仕組みづくりなど、緑に関する総合的な計画として策定します。 - 南アルプス市の特性に応じ、市の創意に基づいて策定する計画
法律に基づいて策定する計画ですが、南アルプス市の緑の特性に応じ、市民の意見を反映しながら、市の創意により策定する計画です。 - 市民・企業・行政などが協働して取り組むための指針(ガイドライン)
緑豊かなまちづくりを推進していくためには、多くの人の理解と協力が必要であり、本計画は、市民・企業・行政などが協働して取り組むための指針(ガイドライン)としての役割をもっています。
計画の目的
自然や環境問題への意識の高まり、高齢化社会の進展、自然とのふれあいを通じた豊かさの希求、ライフスタイルの変化など、「緑」に関する市民意識も変化しており、時代の変化や多様化する市民ニーズに対応した施策の展開が必要となっています。
緑の基本計画は、こうした背景を受け、緑地の保全、都市公園等の整備、公共施設や民有地の緑化、緑の普及啓発活動や仕組みづくりなど、本市の緑に関する総合的な計画として、また、市民・企業・行政が協働して取り組むための指針(ガイドライン)として策定することを目的としています。
計画の位置付け
本計画は、都市計画法や都市緑地法などの法制度に基づいて行われる計画であり、計画の基本的な枠組みについては、山梨県の計画(山梨県緑化計画など)や市の総合計画、都市計画マスタープランといった上位計画や、農業振興地域整備計画などの関連計画などと整合を図る必要があります。
本計画では、これらの計画との整合を図るとともに、相互の施策の連携により計画の実効性を高めていきます。
- 総合計画につきましては、「第2次南アルプス市総合計画」をご確認ください
- 都市計画マスタープランにつきましては、「南アルプス市まちづくり基本方針(都市計画マスタープラン)」(平成19年3月)をご確認ください
計画対象区域
本計画の対象区域は、基本的に南アルプス市全域(面積26,406ヘクタール)としますが、都市公園の整備や都市緑化に関しては都市計画区域を対象とします。
- 市域 26,406ヘクタール
- 都市計画区域 7,420ヘクタール
- 用途地域 492.6ヘクタール
目標年次
本計画の目標年次は、南アルプス市都市計画マスタープランと整合を図り、おおむね20年後の2025年(平成37年)とし、中間年次を2015年(平成27年)と設定します。
将来像と緑のプラン
緑の将来像と目標
将来像
南アルプス市緑の基本計画における将来像を、次のように設定します。また、緑の将来像を実現するため、市民・企業・行政などみんなが力を合わせ、南アルプスの山々と清流と緑に囲まれた「美しいふるさとの緑」を守り、育て、次代に伝えていきます。
「未来の子どもたちに伝える花と緑のふるさとづくり ―美しい山々と清流と緑のまち・南アルプス市―」
基本方針
将来像に基づき、緑のまちづくりを進めていくための基本方針として、次の4つの柱を設定します。
- 守る緑
ふるさとの貴重な自然や風景を守り、次代に伝えていきます。 - 創る緑
安心・快適な暮らしを支える緑の基盤を創ります。 - 彩る緑
花と緑の彩りあるまちなみを創ります。 - 育てる緑
市民・企業・行政の協働により、緑を守り・育てていきます。
計画の目標
計画の基本方針に基づき、公園・緑地の整備状況、地域制緑地の指定状況、緑化状況および将来の人口推計を踏まえ、本計画では、計画の指標として次の4つの目標(数値目標)を設定します。
- 都市公園等の整備目標
都市公園の面積を現在のおおむね1.2倍にすることを目指します。 - 樹林地の保全目標
都市計画区域内の樹林地については現在の約6割の面積を、法や条例等により何らかの保全を講じることを目指します。 - 緑化の目標
身近な目に見える緑を増やすため、まちなかに緑と花を増やします。- 街路樹やまちかど花壇、河川沿いの並木を増やす
- 公共施設の緑を増やす
- 市民参加による緑化を進める
- その他の緑地の確保目標
都市計画区域内の法的に担保された緑地(農振農用地等を除く)の面積を、現在のおおむね1.4倍にすることを目指します。
緑の保全・創造・育成計画
自然・景観の保全・育成
- 基本的な方針
ふるさとの貴重な自然や風景を守り、次代に伝えていきます。樹林地や農地など緑地資源の大部分は民有地であることを踏まえ、土地所有者の理解と協力 を得ながら、多様な緑地保全策を講じるとともに、市民参加による適切な保全と維持管理を進め、先人が残してくれたふるさとの貴重な自然・緑地資源の保全に 努めます。 - 主な施策
- 南アルプスの貴重な自然遺産を守る
- 森林資源の保全と活用を図る
- 農の緑を守る
- 特色ある里山・農村景観を守る
- 水辺の環境と緑を守る
- 大切にしたい身近な緑を守る
- 重要な遺産である歴史・文化的景観を守る
- 生き物の生息環境を守る
公園・緑地整備
- 基本的な方針
安心・快適な暮らしを支える緑の基盤を創ります。公園や緑地は、市民のやすらぎと憩いの場、スポーツ・レクリエーション・コミュニティ活動の場、災 害時の避難場所、まちなみ風景の創出など様々な役割を果たしています。今後は、既存の大規模公園の拡充や身近な小公園や広場の充実・有効活用を中心的に進 めるとともに、必要に応じて新たな公園・緑地整備やまちかど広場の設置、雑木林を活用した市民の森の設置、市民農園の普及など、市民ニーズに応じた多様な オープンスペースづくりを進めます。また、公園・緑地等の整備にあたっては、市民参加による公園づくりを積極的に進めるとともに、防災・防犯や高齢者など に配慮した人にやさしい公園整備を図っていきます。 - 主な施策
- 身近な公園・緑地を創る
- 顔となる緑の拠点を創る
- 安全・安心に利用できる公園・緑地を創る
- 緑のつながりを創る
- 市民参加による公園づくりや維持管理を進める
緑化推進
- 基本的な方針
花と緑の彩りのあるまちなみを創ります。市内では、地域住民やボランティア、小中学校の児童生徒などを中心に植樹や花植えなどの緑化活動が活発に行われ、工業団地でも企業がオープンガーデンを実施しています。今後は、こうした草の根の市民活動の芽を伸ばし、行政と市民・企業が力を合わせて、緑化を推 進し、緑と花に包まれたうるおいと彩りあるまちづくりを目指します。主要な道路や河川などは、良好なまちなみ景観の形成、緑豊かなうるおいあるまちづくり を促進するため、地域の特性に応じた特色ある緑化を進めます。また、市民参加による緑化の推進を図るため、各地区にモデルとなる緑化重点地区を設定しま す。 - 主な施策
- 緑化により特色ある緑の回廊を創る
- まちや地域の拠点となる施設の緑化を進める
- 住宅や工場の緑化を進める
- 地域の景観や環境に配慮した緑化を進める
- 緑化重点地区を設定し、緑化を進める
協働による緑の行動
- 基本的な方針
市民・企業・行政の協働により、緑を守り・育てていきます。「未来の子どもたちに伝える花と緑のふるさとづくり」を実現していくためには、みんなが 力を合わせてふるさとの自然や緑を守り、育てていこうとする意識を持つことが大切です。今後は、市民活動を一層発展させるとともに、緑の普及・啓発活動や 子どもたちを交えた「緑の環境教育」を積極的に進めます。また、市民・企業・行政による緑のまちづくりを進めていくため、支援制度等の仕組みの充実、市民 活動のネットワーク化、行政窓口の充実などを進めます。 - 主な施策
- 市民の自主的な緑化・緑の保全活動を一層発展させる
- 緑の普及・啓発活動を進める
- 緑を守り・育てる仕組みを充実させる
地区別緑のプラン
地区別緑のプランでは、それぞれの地区の現状や課題を把握し、それらを踏まえたきめの細かい生活に身近な緑のまちづくり方針を示します。また、市全 体の緑の保全・創造・育成計画との整合を図り、総合的な施策と地区別の緑のまちづくりの方向性との関わりを明確にします。そして、市民参加を基調とした緑 のまちづくりの展開を図るため、市民懇談会からの意見・提案をはじめ、アンケート調査の分析結果や幅広い市民意向を反映した地区の将来像や緑のまちづくり 方針を示します。
八田地区
- 目標
御勅使川と釜無川の水辺と豊かな樹園の緑を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 御勅使川の文化・歴史遺産の保全と里づくりへの活用を図ります
- 水辺環境の維持・向上を図ります
- 新たな公園整備と既設公園の充実・利用促進を図ります
- 緑化重点地区等の緑化推進を図ります
- 優良農地の保全を図ります
- 良好な田園景観、眺望景観の維持・向上を図ります
白根地区
- 目標
御勅使川扇状地に広がる樹園の美しい眺望景観を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 甘利山の豊かな自然環境を守ります
- 飯丘山周辺の里山の保全とレクリエーション活用を促進します
- 新たな公園整備と既設公園の充実・利用促進を図ります
- 御勅使川ゆかりの歴史遺産の保全と里づくりへの活用を図ります
- 水辺環境の維持・向上を図ります
- 緑化重点地区等の緑化推進を図ります
- 優良農地の保全を図ります
- 良好な田園景観、眺望景観の維持・向上を図ります
- 森林の計画的な保全と適正な維持管理、資源活用を図ります
芦安地区
- 目標
南アルプスの山岳観光の基地にふさわしい里の緑と美しい景観を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 南アルプスの貴重な自然資源の保全を図ります
- 良好な水辺の維持・向上とレクリエーション活用を図ります
- 緑化重点地区として、里づくりと併せた特色ある緑化の推進を図ります
- 森林と渓谷に抱かれた山間の里の美しい景観の維持・向上に努めます
- 貴重な森林資源の保全と適正な維持管理、資源活用を図ります
若草地区
- 目標
地区の歴史を受け継ぎ、釜無川と滝沢川の水辺や樹園の緑と景観を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 既設公園の拡充と機能充実・利用促進を図ります
- 豊かな歴史遺産の保全と里づくりへの活用を図ります
- 水辺環境の維持・向上を図ります
- 緑化重点地区等の緑化推進を図ります
- 優良農地の保全を図ります
- 良好な田園景観、眺望景観の維持・向上を図ります
櫛形地区
- 目標
地区の歴史や文化を受け継ぎ、櫛形山に連なる美しい里の緑と景観を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 櫛形山の豊かな自然環境を守ります
- 貴重な歴史遺産の保全と里づくりへの活用を図ります
- 既設公園の拡充と機能充実・利用促進を図ります
- 水辺環境の維持・向上を図ります
- 緑化重点地区等の緑化推進を図ります
- 伊奈ヶ湖周辺の森林レクリエーション機能の充実を図ります
- 優良農地の保全を図ります
- 森林の計画的な保全と適正な維持管理、資源活用を図ります
- 良好な田園景観、眺望景観の維持・向上を図ります
甲西地区
- 目標
豊かな水辺空間と里山、水田の緑と美しい景観を守り・育てます。 - 取り組み方針
- 城山に連なる地区西部の里山の保全とレクリエーション活用を促進します
- 既設公園の拡充と機能充実・利用促進を図ります
- 貴重な歴史遺産の保全と里づくりへの活用を図ります
- 水辺環境の維持・向上を図ります
- 緑化重点地区等の緑化推進を図ります
- 優良農地の保全を図ります
- 良好な田園景観、眺望景観の維持・向上を図ります
緑の重点プラン
本計画の策定にあたっては、「南アルプス市緑の基本計画 市民懇談会」を開催し、様々な意見交換や議論を経て、最終的に「みどりのまちづくり市民プラン」としてまとめ、市長に提言を行いました。このなかで、「活 動の小さな芽を育て、今できることからはじめよう!」をテーマとした、2つの重点プランが提案されています。この市民の提案を受け止め、計画の推進、緑の 市民活動の一層の促進を図るため、次の2つの取り組みを重点的に推進していきます。
1.多様な市民活動のネットワーク化とその核となる場づくり
現在活動している様々な市民団体やボランティアサークル、企業、個人などに呼びかけ、「(仮)南アルプス市みどりの市民ネットワーク」への登録を行 うなど、緩やかなネットワークづくりを図ります。呼びかけの主体や手法、登録の方法、活動情報の整理などについては、たとえば、次の「(仮)みどりのサ ポートセンター」を設立する際の、準備会のような集まりで話し合うことが考えられます。
「(仮)南アルプス市みどりの市民ネットワーク」の核として、みんなが集まって話し合える場、情報交換の場となる「(仮)みどりのサポートセン ター」の設立に向けた検討を図ります。実現するためには、活動場所の確保や施設の維持管理、センターの機能・役割や運営方法、呼びかけから設立までのプロ グラム、市の連携支援のあり方、緑の専門家やコーディネーターの人材派遣など、様々な課題が考えられますが、市民と話し合いながら、一歩一歩実現に向けて 取り組みを進めます。
2.緑の環境教育の推進
本計画の将来像に掲げた「未来の子どもたちに伝える花と緑のふるさとづくり」を実現していくためには、未来を担う子どもたちや今を生きる大人たち が、緑や自然の大切さを理解し、豊かな感性を育んでいく「環境教育」の推進が最も重要であるという認識に立ち、次のような環境教育への重点的な取り組みを 推進します。
- 学校と連携した環境教育プログラムの充実と活動の推進
- 生涯学習における環境教育プログラムの充実と活動の推進
- 環境教育における人材育成
- 環境教育の場づくり(地域資源の有効活用)
- 環境教育の啓発と推進に向けた仕組みづくり
おわりに
計画の推進に向けて
本計画は、おおむね20年後の平成37年(2025年)を目標に策定しています。本計画を着実に推進していくため、今後、特に次のような事項について優先的に取り組んでいきます。
1.緑の重点プランの推進
- 市の庁内体制の強化
当面は、緑に関する窓口を設置するとともに、市民活動の相談体制づくりを優先的に進めます。また、庁内に緑に関する(仮)連絡会議等を設置し、行政の行うべき施策を総合的かつ計画的に取り組む体制づくりを進めます。 - 「(仮)南アルプス市みどりの市民ネットワーク」の実現に向けた取り組み
本計画の重点プランで掲げた「(仮)南アルプス市みどりの市民ネットワーク」と「(仮)みどりのサポートセンター」の実現に向け、優先的な取り組みを進めます。 - 環境教育の推進に向けた取り組み
市民や学校関係者、企業、行政からなる環境教育を推進する組織を設置し、重点プランで示した環境教育プログラム、人材育成などの具体的な取り組みを進めていきます。
2.緑の基本計画の効果的な運用
- 「緑の基本計画推進プログラム」に基づく計画の推進
「南アルプス市総合計画(実施計画)」や「南アルプス市都市計画マスタープラン」との整合を図りながら、当面、中期目標(平成27年)を目指した「緑の基本計画推進プログラム」の検討・作成を行ない、これに基づく計画の推進を図ります。 - 周辺都市や県・国との連携による計画の推進
南アルプスの山岳や森林帯、釜無川、御勅使川などの周辺地域と連続している ものの維持保全にあたっては、県の広域的な緑地計画との整合を図るとともに、隣接する都市と連携をしながら計画の推進を図ります。また、県や国が管理する森林や河川、道路、公園等の施設についても、市が窓口となり、必要に応じて計画・事業、保全措置などの要請を行うとともに、市民の要望についても伝えていきます。
完全版のダウンロード
南アルプス市 緑の基本計画(Green Plan of MINAMI-Alps City)の完全版がPDFファイルでダウンロードしていただけます。