はじめに
南アルプス市のまちづくり基本方針について
南アルプス市まちづくり基本方針は本市の適正で持続的な発展を支えるまちづくりの方針として策定します。
本市のまちづくりにおいては、問題のある環境を改めて、暮らしやすくするとともに、豊かな自然・田園環境や市民の手により培われた歴史・文化環境を守り、育てて、その魅力を一層高めることが欠かせません。そのためには、将来を展望し、市民意見を反映させ、具体性のある将来ビジョンとその実現の方途を公民協働で確立することが必要です。
このような考えに立ち、本方針は、総合計画(基本構想)の理念を補い、具体化していくための、総合的、一体的に定める都市空間(土地利用、都市施設、地区の整備・開発・保全等)の将来像、実現策、ルール等を方針として策定します。
策定の主旨
都市計画マスタープランは、平成4年の都市計画法の改正に伴い「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(都市計画法第18条2)として創設されま した。
この方針は、市町村が地域固有の自然、歴史、生活文化、産業などの特性を踏まえながら、地域社会共有の身近な都市計画を重視したまちづくり(都市づくり)の将来ビジョンを描き、都市計画を先導するために、都市計画区域を有する市町村にその策定の義務があると法的に位置づけられたものです。
1.必要性
ゆとりと豊かさを真に実感でき、個性的で安全・快適なまちづくりを進めるためには、目標とする都市像をより具体的に表す必要があります。
2.特徴
- 独自の創意工夫による策定
策定の具体的な内容、方法等は、市町村の自主的な判断に委ねられています。より多くの市民が共感しうる内容や方法についての合意や創意工夫が求められます。 - 住民意見の反映
住民意見を反映しつつ策定する過程それ自身が、住民のまちづくりへの理解を得、合意形成に資するものであり、よりよいまちづくりへの第一歩となるものです。
市町村の都市計画に関する基本的な方針(都市計画法)
第十八条の二
- 市町村は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想並びに都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即し、当該市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めるものとする。
- 市町村は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
- 市町村は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県知事に通知しなければならない。
- 市町村が定める都市計画は、基本方針に即したものでなければならない。
(平四法八二・平一二法七三・追加)
策定の基本方針
策定の目的
南アルプス市まちづくり基本方針は本市の適正で持続的な発展を支えるまちづくりの方針として策定します。本方針は、総合計画(基本構想)の理念を補い、具体化していくための、総合的、一体的に定める都市空間(土地利用、都市施設、地区の整備・開発・保全等)の将来像、実現策、ルール等を方針として策定します。
法制度上の位置づけ
- 国、県の計画、都市計画区域の整備・開発及び保全の方針(県マスタープラン)、南アルプス市総合計画に即す合わせた位置づけです
- 個別具体の都市計画の指針となります(市の定める都市計画は方針に即します)
役割
- 目指すべき将来都市像、将来地域像を具体的に示します
- まちづくりに関わる総合的な施策推進の指針とします
- 市民に分かりやすく示し、理解と参加を得ます
基本的な性格
- 市民と行政による都市づくりの共同宣言
- 新市としての体系的な都市計画の指針
構成と計画期間
- 全体構想、地域別構想及び実現の方法の構成とします
- 全体構想は、都市計画区域を基本に必要に応じて市全域を考慮します
- おおむね20年後の中長期を見据えた方針とします
- 計画の進行を管理し、必要に応じて見直しを行います
策定の基本的考え方
- 南アルプス市の特性を活かした独自の考え方を示します
- 計画の立案過程を重視します
- 市民意向を反映し、分かりやすく表現します
課題と目標及び構想
特性と課題
まちづくりの現況と特性
南アルプス市は、その成り立ちや現況から、次のような特性を持っています。
- 樹園・田園のまち
扇状地中央部での果樹生産、里山・河川沿いでの稲作をはじめ、野菜・花卉生産などにより、樹園・田園風景を形作っています。農業は、本市のなりたちと深く かかわり、新鮮な食料の供給のみにとどまらず、自然環境の保全や果樹観光交流など、都市形成の基盤として重要な役割を担っています。 - 豊かな農林・自然環境にふれあえるゆとりある居住のまち
扇状地における広がりのある農地とともに、本市は、南アルプス山系に連なる西の山岳丘陵、櫛形山、市之瀬台地、東に位置する釜無川、扇状地を流れる御勅使 川、滝沢川、坪川など水と緑の豊かな自然環境を有しています。一方、地域の人口は、県都甲府市からの人口移動などにより増加しています。
こうした背景には、豊かな自然・田園環境と生活基盤の充実が上げられます。本市は、豊かな農林・自然環境にふれあえるゆとりある居住のまちとして、その魅力の一層の向上が市民に広く支持されているまちです。 - 多様な産業のまち
甲州鬼面瓦、甲州武者のぼり、鯉のぼりなど、特徴ある地域の伝統工芸は、これまでの多様な都市交流を背景に地域資源を活用して培われてきました。また、現在では、市内各地域に工業団地の整備が進み、地域に根付いた産業地としてその機能を果たしています。
このように、本市は、地域産業から先進工業までの多様な産業を有するまちです。 - 雄大な扇状地景観のまち
御勅使川扇状地は、その広がりのある地形から、一体の地域を形成するとともに、地域内外の交流を可能とし、これまでに多様なまちや里の環境や資源を形づくってきました。これら資源と広がりのある扇状地及び背後山岳により作られる景観は、本市の魅力の源泉といえるものです。 - 豊かな歴史・文化のまち
扇状地における水の確保や水害対策の歴史、街道まちづくりやその背後の農業・集落環境の形成などによる様々な歴史が重なり合って、個性ある独自の歴史・伝統・地域文化をつくっています。
主要課題
現況と特性、市民意向、社会潮流への対処を踏まえた、まちづくりの主要課題を明らかにします。
- 土地利用の適正化
ゆとりと魅力のある南アルプス市として、「田園・樹園のまち」、「自然環境の豊かなまち」、「住宅のまち」、「雄大な扇状地景観のまち」、「歴史・文化のまち」の魅力を一層高め、ゆとりと魅力のある南アルプス市を具体的に形づくっていくためには、本市のめざすべき土地利用を明確にし、その実現化策を強化して行く必要があります。 - 環境との共生
人口の増加に伴う都市の拡大に対して、農林自然環境と共生し、環境負荷の小さな都市づくりとして、都市交通施策と土地利用計画の連携、エネルギーロスの少ない交通施策などが求められます。 - 安全・安心のまちづくり
地域での安心の暮らしのために、福祉のまちづくりを一層推進するとともに、施設空間(公共施設、住宅等)のバリアフリー化、さらには、高齢者交通をも考慮した公共交通システムの構築が求められています。 - 美しい風景の育成
「美しい風景の都市」を具体化する施策の展開が求められます。景観法等の適用を考慮した景観の整備、規制、誘導策や誘導マニュアル等の制定も必要です。また、景観形成に関わる市民参加活動の支援策、市民主体の推進体制や手続き、基準や審査など具体的な施策化が求められます。 - 快適な交通システムの形成
生活環境、産業、経済活動等のため道路交通システムの一層の充実が必要です。特に、公共交通システムの整備をはじめ、交通バリアフリー化をめざし、歩行者生活交通基盤の改善整備は、日常的課題です。 - 地域内発型産業の形成
本市においては、農林地の荒廃化に計画的に対処し、環境共生型、土地利用型の農業・農地保全活用のあり方を具体的に検討して土地利用調整を実施するとともに、各種産業振興施策との連携を強めるまちづくり・里づくりの推進が課題となります。
まちづくりの目標と全体構想
南アルプス市らしいまちづくり
南アルプス市らしさというべき本市の魅力とは、「水とみどり、広がりのある扇状地、田園・樹園、交流と産業、歴史・文化環境、ゆとりのある居住環境など、風土や時代の移り変わりの中で、新市南アルプス市に至る人々の暮らし・営みが相まって形づくってきた」ものです。
本方針は、このような南アルプス市らしさの感じられる環境の魅力を高めることを通じて、様々な立場の人々が本市に集まり、魅力と活力があり、持続的に発展する南アルプス市を形成していくことを基本に据えて、そのまちづくりの方針を表わすものです。
- 基本理念
- 市民が安心・快適に暮らせるまち・里
- 共生・共存できるまち・里
- 魅力と個性のあるまち・里
- 市民が主役でつくるまち・里
ゆとりのある環境を育む方針
- 土地の利用
ゆとりのある樹園都市・南アルプス市らしさを守り、育てるために、地域の特性に応じた計画的な土地利用の形成をめざします。- 農林・自然環境のつながりを守り、活用します
- 緑とゆとりがあり、まとまりのある住宅地・集落地をつくります
- 市民生活を支える南アルプス市らしいまちの中心をつくります
- 活気のある農業集落地をつくります
- 土地特性にふさわしい利用を進めます
- 水と緑の保全・共生
本市における豊かで身近な自然環境と共生し、水と緑の環境の保全・回復をめざします。- 骨格的な水と緑の構造を保全し、自然環境の保全・回復をめざします
- 歴史的伝統的風土を創る水と緑の環境の保全・回復を進めます
- 安全で個性ある景観を形成する緑地の保全と回復を進めます
- 身近に自然とふれあえる場の整備を図ります
- 公園・緑地の整備を図ります
- 緑地の適正な維持管理と環境に対する市民意識の高揚を図ります
個性と魅力のある環境を整える方針
- 景観形成
地域の雄大な眺望に調和し、個性と広がりのある扇状地としての景観づくりを進めて、都市のイメージの向上をめざします。 - 歴史と文化にふれあえるまちづくり
南アルプス市固有の歴史・文化にふれあうことのできるまちづくりを進め、本市の歴史を広くPRし、伝統と新しい文化の調和した個性が光る魅力的なまちづくりをめざします。 - 産業環境整備
持続的で活力ある地域経済活動を支える効果的な産業環境の形成と地域の資源、環境、伝統・文化を活かした産業のあるまちの実現をめざします。
快適で安心の暮らしを支える方針
- 防災まちづくり
災害に強く安全な暮らしのための環境形成、災害の危険を軽減する都市空間の創造、災害を防御し安全な避難を可能とする都市構造の形成をめざします。 - 福祉のまちづくり
高齢者や障害者が安心して快適に過ごせるまちの実現をめざします。 - 循環型まちづくり
市民と行政が連携して、市民生活から地球規模にいたる環境に関わる課題に対処する循環型の社会形成をめざします。 - 生活基盤整備
- 交通体系整備
快適に移動できる交通基盤の形成、道路網の形成とともに、安全性・快適性・利便性の確保をめざします。 - 河川・下水道整備
河川は治水と河川環境の両機能を有する改修により、多自然型川づくりをめざし、下水道は計画区域全体を整備し、生活環境の向上と自然環境の保全をめざします。 - 住宅・住環境整備
市民のための住宅・住環境の質の向上と豊かな生活の確保をめざし、南アルプス市らしいゆとりのある住宅・住環境の形成をめざします。
- 交通体系整備
地域別構想
八田地域
- 御勅使川とともに生きる、安全で快適なまち
- 暮らしやすく、安全で快適なまちづくりをめざします
- 御勅使川を中心とした歴史・文化のまちづくりとその拠点の形成をめざします
- 美しい眺望と広がりのある田園を守ります
- 計画的な産業地の形成を進めます
白根地域
- 豊かな農にふれあえる、樹園交流のまち
- 果樹観光交流を中核に据えたまち・里づくりをめざします
- 河川沿い地区での計画的なまちづくり・景観づくりを進めます
- 里山田園エリア等での農林・自然環境の保全・活用を進めます
- 地域情報・交流、生活利便のための地域拠点の形成を図ります
- 地域文化環境の保全・活用・強化を進めます
芦安地域
- 山里の雰囲気を楽しむ、山岳観光の里づくり
- 山岳観光の拠点化里づくりをめざします
- 河川と山岳による景観を守り、その質を高めます
- 生活・交流を支える安全な交通機能を確保します
- 地域主導の里づくりを進めます
若草地域
- 地域の歴史・文化と農のある環境を受け継ぎ育てる暮らしのまち
- 暮らしやすく魅力ある集落里づくりを進めます
- 農地・農業の保全・振興を推進します
- 道路整備と沿道利用の適正化による地域環境の保持を図ります
- 地域の歴史・文化資源を活用したまちづくりと地域の活性化を進めます
- 中心公共施設地区での魅力づくりを図ります
- インター周辺での拠点的機能の検討・整備をめざします
櫛形地域
- 櫛形山に連なる雄大な風景に、自然・歴史・文化を受け継ぐ、地域交流のまち
- 地域らしさを形づくっている、骨格的な地域構造を守ります
- 雄大な風景に調和するまちづくり・里づくりの推進をめざします
- 南アルプス市の顔となる拠点づくりをめざします
- 山麓でのふれあい交流の里づくりを進めます
- 歴史と文化のまちづくりを推進します
甲西地域
- 培われた文化を守り、新たな産業と田園が調和する豊かな交流のまち
- 広がりのある水田の安定的な環境づくりを進めます
- 里山地域での都市交流を通じた地域の活性化を図ります
- 歴史文化をつなぐコンパクトなまちの魅力づくりを進めます
- 地域をつなぐ道路の整備を進めます
おわりに
実現に向けて
目標都市像の実現に向けて、市民主導・協働・協調によりまちづくりを進めていきます。
- 市民主導のまちづくり
市民が主体となり、主導的にまちづくりを進めるための支援を行っていきます。 - 協働によるまちづくり
市民・企業・行政は、それぞれの持つ特徴や役割を十分に果たすとともに、主体間の連携や協働により本方針の実現に取り組みます。 - 協調によるまちづくり
開発事業者をはじめ参画する各主体は、そのルールの趣旨を理解し、協調してまちづくりの推進に取り組みます。
まちづくり推進の方法
- 法制の活用
様々な法律に基づく制度の積極的な活用を図り、特に地域地区制度の内、用途地域の活用とともに特定用途制限地域や建ぺい率・容積率制限等の用途地域外での制度についても地域の特性に応じて、積極的にその活用の検討を進めるものとします。また、地区のまちづくりにおいては、地区計画、建築協定、景観協定や風致地区などの活用を図ります。 - 独自条例の制定
法制度を補完して本市独自のまちづくりを推進するルールとして、まちづくり条例の制定をめざします。まちづくり条例については、基本理念、市民主導のまちづくり、協働によるまちづくり、協調によるまちづくりを推進する基本的な仕組み・手続き・ルールを本市の特性を重視して検討し、その制定をめざします。 - 手法の組み合わせと連携の強化
法律に基づく規制誘導手法、都市計画事業などの事業手法及びまちづくり条例などの独自手法を組み合わせて、目標の達成をめざします。また、事業の実施に当たっては、まちづくり交付金などの活用を図ります。なお、これら施策の展開の際には、県及び周辺都市との連携、市内各地域の連携や施策間の横断的連携を重視した取り組みを行います。
目標指標
目標と成果を市民に具体的に明らかにし、結果を検証して、実効性のある計画とします。
計画の進行管理
目標や指標の達成状況について管理します。まちづくり基本方針はおおむね5年ごとに成果を検証し、社会情勢の変化に応じて見直しを行ないます。見直しに際しては、本方針の実施状況を公表し、市民意向を反映してその検討を進めます。
完全版のダウンロード
南アルプス市まちづくりの基本方針(都市計画マスタープラン)の完全版がPDFファイルでダウンロードしていただけます。