水力発電所整備計画について
南アルプス市では、豊富な水資源があることや発電する際に二酸化炭素や有害な廃棄物を排出しないことなどから、新エネルギーである小水力発電所の建設を行なっています。
平成22年2月1日に金山沢川水力発電所の運転を始めました。
整備計画までの経過と目的
南アルプス市では、平成16年度に策定された市総合計画において、「市内の自然環境に応じた自然エネルギーの活用を図るため、新エネルギービジョンを策定し、太陽光発電の一層の促進や小規模水力発電の活用の促進など、環境に配慮した新エネルギーの開発や利用を推進する」と位置づけています。
この方針に基づき、平成17年度には新エネルギー導入に関する具体的な取組みとして「南アルプス市地域新エネルギービジョン」を策定し、水力発電所の整備を導入プロジェクトに位置づけました。
今回の整備計画では、発電した電力は、近接する公共施設「南アルプス芦安山岳館」へ供給し、購入していた分の電力を自家発電で賄うものです。これにより、石炭や石油などの化石燃料や二酸化炭素の削減を進められるだけでなく、経費の削減が図られことから、環境問題と財政問題を同時に解決していけるようなモデルとして期待できます。
本事業の特徴
1.先進性
本事業の取水方式は、浸透水取水方式とえん堤穴あけ方式。
- 堆積した砂防えん堤で安定した取水が可能
- 堤体への取り付けにより工事を最小限に抑えられる
- 構造が簡単なため経済性及び施工において有利である
2.波及性、効果性
本方式は、周辺都道府県を含め県内では事例がないことから、効率性や経済性が予測どおり発揮できれば、他自治体の先進事例として模範となると思われます。これにより、本事業と同じような比較的に水量が少ない河川を活用した地域でも水力発電施設の建設と普及が期待できます。
金山沢川水力発電所の概要
金山沢川の有効落差42メートルの砂防えん堤を利用し、およそ140メートル先下流の発電所まで導水し、最大出力100キロワットを発電するものです。また、発電に使われた水は発電した後、再び金山沢川へ放流し、下流域に影響が及ばないように設計されています。
- 水系及び使用河川名
一級河川富士川水系御勅使川左支川金山沢川 - 発電所位置
山梨県南アルプス市芦安芦倉地先内 - 流域面積
10.1キロメートル - 発電方式
水路式
周辺写真
2010年5月12日撮影
発電所遠景
発電所の詳細
使用水量
最大 0.32立方メートル毎秒
常時 0.115立方メートル毎秒
使用することのできる最大の水量を最大使用水量といい、1年を通して365日間使用できる見込みの水量を常時使用水量といいます。
0.32立方メートル毎秒を500ミリリットルのペットボトルに例えると、600本(300リットル)分の水を1秒間にこぼした量になります。
落差
取水位 883.00メートル
放水位 838.93メートル
総落差 44.00メートル
有効落差 42.00メートル
取水位(取水地点の水面標高)と放水位(発電所から放水される水面標高)の高低差を総落差といいます。有効落差は、総落差から導水路の勾配などによる損出(ロス)等を減じたものです。
出力
最大 100キロワット
常時 30キロワット
発電所の発電力をキロワット(kW)で表したものをその発電所の出力といい、当該発電所で発電できる最大の出力を最大出力といいます。
また、常時出力とは、常時使用水量により年間を通じて常に発生できる見込みの電力をいいます。
今現在の発電所の出力量は「金山沢川水力発電所出力状況(外部サイト)」から確認していただけます。
年間発電量
740,000キロワット時/年
最大100キロワットで1年間を通して発電できた場合の計画電力の合計量です。
発電所
半地下式
幅 5.70メートル
長さ 8.00メートル
高さ 6.29メートル
建屋の大きさと形式です。なお、半地下式は、建屋の半分程度が地面より下になります。
水車形式
クロスフロー水車 1機 (チェコ共和国マーベル社製)
水の圧力と速度を利用します。空調用シロッコファンのように短冊形の長い羽根が円盤に多数植えつけられているような形状を持つ水車です。
クロスフローとは水がランナーを交差し流れることを意味しています。
主に1000キロワット以下の小水力発電所で採用されます。
発電機
三相誘導発電機 400ボルト/50ヘルツ 1機 (チェコ共和国マーベル社製)
水車の原動機の動力エネルギーを電気エネルギーに変換するものです。発電機の種類も多種多様ですが、本計画ではシステム全体として一番適した発電機として採用しました。
導入効果
計画とおりの発電が行われた場合、次の削減効果があります。
- 購入電力の削減量 740,000キロワット時/年
およそ200世帯分の電力消費量。 - 原油削減量 183キロリットル/年
ドラム缶(200リットル)でおよそ915本分
(長さ25メートル幅15メートル深さ1.5メートルのプールで約3個分)。 - 二酸化炭素削減効果 400トン/年
日本国民およそ180人が年間に排出する二酸化炭素の量。