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日本における水力発電の歴史

自然の原理を利用した水力発電は、古くから日本のエネルギー供給における重要な役割を果たしてきました。長い実績に裏付けられた信頼性の高い水力発電は、これからも電気を造り続けます。

水力発電は、1878年(明治11年)にフランスのパリ近郊セルメーズ製糖工場で行われた水力発電に始まる。日本では、1882年(明治15年)頃に九州島津藩庭園において、水車を利用した水力発電が試みられたと伝えられている(庭園裏山の尾根伝いに導水路の痕跡があるといわれている)。

日本で本格的に水力発電が始まったのは、紡績業における水力発電である。宮城県荒巻村三居沢にあった宮城紡績会社が、1888年(明治21年)に紡績機を稼動させるための40馬力の水力タービンに5キロワットの直流発電機を取り付け、東北地方で最初の電灯となるアーク灯を点灯させた。この紡績会社は、その後宮城水力紡績会社として、1894年(明治27年)に30キロワットの交流発電機による発電により電気事業に参画した。

電気事業用の水力発電は、琵琶湖疎水を利用した120馬力の水車2基と80キロワットの発電機2基による京都市の蹴上発電所の1891年(明治24年)に始まる。

蹴上発電所で発電した電力は、京都電灯会社への卸売・工場動力用として供給され、1895年(明治28年)1月には、塩小路(京都駅)から伏見油掛間6.4キロメートルで開通した日本で最初の電気鉄道である京都電気鉄道へ供給された。

このように我が国の水力発電は、主として内陸部の大企業により水力発電地帯に近い地方都市から始まった。これは、水力が豊富な内陸部の工業適地が交通が不便で石炭輸送に高い費用がかかったため、気力発電(火力発電)が困難であったからである。

(出典/小水力エネルギー読本「小水力利用推進協議会編」オーム社)

各地区最古の水力発電所

各地区最古の水力発電所
地区 発電所名 河川名 有効落差
(メートル)
最大流量
(立方メートル毎秒)
最大出力
(キロワット)
運転開始 区分 現状
北海道 岩内 幌内川 120尺 詳細不明 120 明治39年11月1日 事業用 廃止
東北 三居沢 広瀬川 (26.67) (5.57) 5 明治21年7月1日 自家発 稼働中:1,000キロワット
東京 下野麻紡績 利根川 詳細不明 詳細不明 17 明治23年7月 自家発 廃止
中部 岩津 郡界川 (53.94) (0.37) 50 明治30年7月 事業用 稼働中:130キロワット
北陸 鹿間 神通川 (188.89) (0.17) 5 明治27年3月 自家発 稼働中:240キロワット
関西 蹴上 琵琶湖 (33.74) (16.70) 80×2基 明治24年11月 事業用 稼働中:4,500キロワット
中国 黒瀬川 81.80 1.03 750 明治32年5月 事業用 廃止
四国 (旧)湯山第1 重信川 27.273 1.391 260 明治36年1月 事業用 稼働中:3,400キロワット
九州 小山田 甲突川 (26.95) (1.10) 60 明治31年4月22日 事業用 稼働中:240キロワット

各地区データの( )内は現状の値

(出典/小水力エネルギー読本「小水力利用推進協議会編」オーム社)

水力発電の特徴

1.クリーンエネルギー

水力発電は、運転中に窒素酸化物、硫黄酸化物を排出しないだけではなく、石油や石炭などの各種電源に比べ二酸化炭素を発生しないクリーンなエネルギーであり、地球温暖化防止の観点から非常に重要です。

2.純国産エネルギー

一次エネルギー全体に占める水力発電の割合は3.4パーセントですが、「純国産」という観点から見ると、国産エネルギー全体における割合は、61.4パーセントと大半を占めています。

3.再生可能エネルギー

水は永遠に無くなることのない、繰り返し使える(再生可能)エネルギーです。今後、開発可能な水力発電所は、約2,700地点(45,800,000,000キロワット時)あると考えられています。これらが一年間に生み出す電気の量を原油に換算すると約1,050万キロリットル(202,000,000,000円)にもなります。

4.電力の一翼を担う水力

水力発電は、短時間(3から5分)で発電が可能で、電力需要の変化に素早く対応できるという特徴があります。このような特徴を生かして、流れ込み式はベース供給力として、調整池式・貯水池式・揚水式はピーク供給力として、無くてはならない重要な役割を果たしています。

(参照/発電の仕組み)

5.発電コストの長期安定性

水力発電の原価の構成は、資本費関係が大部分であるため、インフレや燃料コストの変動の影響は少なく、他電源に比べ発電コストは長期的に安くかつ安定しています。

6.エネルギーの変換効率が高い

水力発電の水車・発電効率は、80から90パーセント程度です。一方、火力発電の熱効率は40から50パーセント程度となっており、水力発電が約2倍となるため、非常に効率が良い電源といえます。

7.ローカルエネルギー供給

今後、開発が見込まれている水力発電所の適地は、山間部に点在するため、系統運用上からローカル需要に対処する供給源としての機能を期待できます。また、自然災害などの緊急時に必要最小電源としてエネルギーセキュリティに貢献できます。

8.社会教育機会の提供

クリーンエネルギーである水力発電施設を整備することにより、地域住民や将来を担う子供たちに対してエネルギー・環境に関する教育の場を提供する事ができます。身近にある発電所として、日常の省エネルギー活動や新エネルギーの普及促進に向けた地域住民への広報・啓発活動の推進に貢献できます。

9.地域の発展に貢献

水力発電の開発は、治水、かんがい、上水道、工業用水などと連携することにより、地域の社会基盤整備の促進に貢献します。また、ローカル拠点として、住民にふれあいの場を提供し、文化的行事、各種イベントの開催等、地域社会に活力を与える拠点として貢献できます。

水力発電のメリットとデメリット

水力発電は、仕組みが単純なことから歴史も古く、完成度の高い技術といえます。しかし、長所も多くありますが、短所も多いのが現状です。ですから、計画を事業化するに当たっては、地点の選定から需要計画の策定、最適発電規模の検討、発電計画による収支の推計など、概略検討を行った上で発電設備の工事費の算出及び資金調達の検討などの詳細検討を行います。したがって、計画性を重視した事業展開が要求されます。

メリット

デメリット

南アルプス市の水力発電について

私たちの生活は電気、ガス、ガソリンなど、さまざまな大量のエネルギー資源に支えられています。日本ではかつて国産の石炭や水力などの国内天然資源エネルギーの活用により、例えば1960年には約6割の自給率を達成していました。しかし、その後の高度経済成長の下でエネルギー供給量が急増し、石油が大量に輸入されるとともに、石炭も輸入中心へと移行したことなどから、エネルギー自給率は大幅に低下しました。

そのため、2004年のエネルギー自給率は水力等わずか4パーセント(原子力を除く)となっています。これは、低いと言われる日本の食料自給率(カロリーベース)40パーセントと比較しても、大幅に低い水準であることがわかります。

このように、大部分を輸入に頼っている資源ですが、化石燃料はいずれ枯渇すると予想され、先行き厳しいのが現状です。また近年、化石燃料を使い続けてきたため、大気中の二酸化炭素が増え、それが原因と思われる地球温暖化が進行しているとされ、その抑止について世界的な取組みがなされています。この「エネルギー問題」と「地球温暖化問題」を克服するためには、エネルギー消費と二酸化炭素を抑制するために省エネルギーを推進するとともにさまざまなエネルギーをうまく組み合わせて使うことが大切です。

本市では、地球規模でみれば少ない量ですが、二酸化炭素抑制の実践行動として、豊富な水資源があることや発電する際に二酸化炭素や有害な廃棄物を排出しないことなどから、新エネルギーである小水力発電所の建設を行うこととしました。

南アルプス市の水力発電所の詳細につきましては、「金山沢川水力発電所整備計画」をご確認ください。

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