わたしたちの住む南アルプス市では、切迫性が指摘されている「東海地震」、「糸魚川-静岡構造線断層地震」をはじめ、市内に断層があり甚大な被害が予想される「釜無川断層地震」など多くの地震の発生が危惧されています。
近い将来起こりうる地震に対してイメージをし、その対策をたてることで被害を最小限に食い止めることができます。自分自身そして家族の生命を守るためにも、もう一度、一人ひとりが地震と向き合い「いま何ができるのか」「何をしなければならないか」考えてみませんか。
1.東海地震
駿河トラフに沿う地域では、90年から150年の周期で、繰り返し巨大地震が発生しており、1854年の安政東海地震以来、大地震がなく既に150年以上も経っているため、「いつ起きても不思議でない」地震であり、その切迫性が指摘されています。
昭和51年に発表されたいわゆる「東海地震説」を受けて以来、地震の観測体制が整えられ、静岡西部・駿河湾一帯を震源とする、マグニチュード8クラスの大規模地震に伴う強いゆれや津波等の被害が広範囲で発生するという予測がされ、ひとたびこの地震が発生するとその周辺では大変な被害が生じると予想されています。
そこで、地震の発生によって著しい被害が予想される地域が、大規模地震対策特別措置法(昭和53年12月)により「地震防災対策強化地域」として指定され、数々の防災対策の強化が図られています。本市もこの強化指定地域に指定され、地震に対する基盤整備を進めてきました。
東海地震は、その発生メカニズムや予想震源域・歴史的資料がある程度判明しており、前兆現象を捉えるための観測・監視体制が震源域直上に整備されていることから、現在日本で唯一予知(東海地震関連情報)できる可能性がある地震とされていますが、プレートの歪みの跳ね返りが陸の下でなく、海の下で起きはじめた場合予知が出来ない可能性も指摘されています。
山梨県においては震源に近い県南部を中心に広範囲に被害が出現し、地震予知が出来ない場合は全県下で344人の死者、約1万人の負傷者が発生するとみられています。
南アルプス市内においては震度6弱以上(甲西地区の一部は震度6強)の揺れが想定され、約30人の死者と1,100人の負傷者が発生、また4,000棟(約15パーセント)を超える建物が、被災するとされております。
建物・死傷者・ライフラインの想定される被害規模
建物被害想定
建物棟数 | 全壊戸数 | 半壊戸数 | 被災戸数 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 2,352 | 0(0.0) | 0(0.0) | 0(0.0) |
白根地区 | 8,055 | 1(0.0) | 2(0.0) | 3(0.0) |
芦安地区 | 209 | 0(0.0) | 0(0.0) | 0(0.0) |
若草地区 | 4,231 | 2(0.0) | 3(0.1) | 5(0.1) |
櫛形地区 | 7,688 | 0(0.0) | 0(0.0) | 0(0.0) |
甲西地区 | 5,488 | 5(0.1) | 9(0.2) | 14(0.3) |
全体 | 28,023 | 8(0.0) | 14(0.0) | 22(0.1) |
カッコ内は各被害率(単位/パーセント)
建物棟数 | 全壊戸数 | 半壊戸数 | 被災戸数 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 2,352 | 11(0.5) | 135(5.7) | 146(6.2) |
白根地区 | 8,055 | 110(1.4) | 783(9.7) | 893(11.1) |
芦安地区 | 209 | 2(1.0) | 17(8.1) | 19(9.1) |
若草地区 | 4,231 | 101(2.4) | 623(14.7) | 724(17.1) |
櫛形地区 | 7,688 | 184(2.4) | 1,080(14.0) | 1,264(16.4) |
甲西地区 | 5,488 | 181(3.3) | 902(16.4) | 1,083(19.7) |
全体 | 28,023 | 589(2.1) | 3,540(12.6) | 4,129(14.7) |
カッコ内は各被害率(単位/パーセント)
建物棟数 | 全壊戸数 | 半壊戸数 | 被災戸数 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 2,352 | 11(0.5) | 135(5.7) | 146(6.2) |
白根地区 | 8,055 | 111(0.0) | 785(9.7) | 896(11.1) |
芦安地区 | 209 | 2(1.0) | 17(8.1) | 19(9.1) |
若草地区 | 4,231 | 103(2.4) | 626(14.8) | 729(17.2) |
櫛形地区 | 7,688 | 184(2.4) | 1,080(14.0) | 1,264(16.4) |
甲西地区 | 5,488 | 186(3.4) | 911(16.6) | 1,097(20.0) |
全体 | 28,023 | 597(2.1) | 3,554(12.7) | 4,151(14.8) |
カッコ内は各被害率(単位/パーセント)
死傷者被害想定(予知なしの場合)
建物倒壊 | 火災 | 崖崩れ | 計 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 1 | 0 | 0 | 1 |
白根地区 | 6 | 0 | 0 | 6 |
芦安地区 | 0 | 0 | 0 | 0 |
若草地区 | 5 | 0 | 0 | 5 |
櫛形地区 | 10 | 0 | 0 | 10 |
甲西地区 | 9 | 0 | 0 | 9 |
全体 | 31 | 0 | 0 | 31 |
建物倒壊 | 火災 | 崖崩れ | 計 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 5 | 0 | 0 | 5 |
白根地区 | 21 | 0 | 0 | 21 |
芦安地区 | 0 | 0 | 0 | 0 |
若草地区 | 15 | 0 | 0 | 15 |
櫛形地区 | 26 | 0 | 0 | 26 |
甲西地区 | 20 | 0 | 0 | 20 |
全体 | 87 | 0 | 0 | 87 |
建物倒壊 | 火災 | 崖崩れ | 計 | |
---|---|---|---|---|
八田地区 | 54 | 0 | 0 | 54 |
白根地区 | 243 | 0 | 0 | 243 |
芦安地区 | 5 | 0 | 0 | 5 |
若草地区 | 173 | 0 | 0 | 173 |
櫛形地区 | 302 | 0 | 0 | 302 |
甲西地区 | 235 | 0 | 0 | 235 |
全体 | 1,012 | 0 | 0 | 1,012 |
ライフライン被害想定
停電契約口数 | 断水世帯数 | |
---|---|---|
八田地区 | 1,864(52.28) | 685(35.12) |
白根地区 | 3,470(34.93) | 1,744(33.76) |
芦安地区 | 0(0.01) | 67(32.99) |
若草地区 | 2,857(52.95) | 1,188(42.70) |
櫛形地区 | 2,952(30.15) | 2,746(51.88) |
甲西地区 | 3,464(50.65) | 3,434(94.20) |
全体 | 14,608(40.74) | 9,863(51.81) |
カッコ内は停電契約口率(単位/パーセント)と断水世帯率(単位/パーセント)
居住制約世帯数 | 居住制約者数 | ライフライン支障世帯数 | |
---|---|---|---|
八田地区 | 66 | 223 | 202 |
白根地区 | 346 | 1,244 | 492 |
芦安地区 | 4 | 11 | 22 |
若草地区 | 294 | 1,018 | 344 |
櫛形地区 | 500 | 1,736 | 746 |
甲西地区 | 441 | 1,498 | 939 |
計 | 1,651 | 5,730 | 2,745 |
2.糸魚川-静岡構造線断層地震
長野県~山梨県にかけて存在する活断層による地震で、断層にそって震度6(弱)の地域が帯上に分布し、釜無川に沿って震度6(強)の地域が分布しています。
被害の分布は、釜無川断層による地震のケースに比較的似ており、県西部から中部にかけての地域で甚大な被害が想定されます。また、急傾斜地の崩壊や地滑りによる被害は釜無川や富士川沿いの地域に発生が予想されます。
南アルプス市内においては、約3割の建物が被災し、建物の倒壊等により約150人の死者、約2,000人の負傷者が発生すると想定されています。ライフラインでは約82パーセントの世帯で断水が、また約43パーセントの世帯で停電が発生すると想定されます。
なお、この断層帯は地震調査研究推進本部地震調査委員会が全国の主要断層帯を調査した結果、2001年の調査報告時点で「最も地震発生の確率が高い断層帯である」と指摘しており、具体的には今後30年以内に地震が発生する確率が14パーセント、50年以内に23パーセント、100年以内に41パーセントとされております。
この「30年以内14パーセント」という数値は、他の断層帯と比べて突出して高く(3パーセント以上で発生確率は高いグループになる)、東海地震とならんで切迫性が高く、また市内の被害想定においても東海地震以上とされており警戒が必要です。
3.釜無川断層地震
活断層による地震で、山梨県西部から中部に至る地域(断層に沿った地域)を中心に甚大な被害が発生する地震とされており、県内の想定されうる地震の中で最も深刻な被害が予想されています。
震度7の地域は韮崎市、南アルプス市、増穂町に分布しており、山梨県下では被災棟数は100,000棟を超える規模とされています。
南アルプス市においては、約半数の建物が被災するなど甚大な被害が想定され、建物の倒壊等により385人の死者、約3,000人の負傷者が発生するとされています。水道供給については約99パーセントの世帯で断水被害が、また、電気に関しては約82パーセントの世帯で停電が発生すると想定されます。急傾斜地の崩壊や地滑りによる被害も想定されます。
4.曽根丘陵断層地震
甲府盆地を中心に比較的限定された範囲で、甚大な被害が発生し、三珠町、豊富村、中道町、旧境川村、旧八代町で被災率が50パーセントを超え、被災棟数については、甲府市で1,500棟を超えると想定されます。
断層付近においては、急傾斜地の崩壊や地滑りによる被害が発生すると予想されます。
南アルプス市においては特に若草・櫛形・甲西地区で被害が大きく、市内全体で約20パーセントの建物が被災し、65人の死者、1,300人以上の負傷者が想定されています。また、ライフラインにおいては、断水世帯が約55パーセント、停電世帯が約41パーセントと想定されています。
5.藤の木愛川断層地震
県中部から東部にかけての断層に沿った地域を中心に広範囲に被害が発生し、釜無川断層による地震に次ぐ規模の被害(被災棟数は県内で約9,500棟)が想定されます。
被災棟数は、甲府市の20,000棟をはじめ、笛吹市、山梨市、塩山市、大月市、都留市、富士吉田市を中心に被害が想定されています。
急傾斜地の崩壊や地滑りによる被害についても県中部から北東部にかけて多数発生し、特に断層に沿った地域ではその被害は甚大と想定されます。
南アルプス市においては、約17パーセントの建物が被災し、38人の死者、1,200人以上の負傷者が想定されています。
また、ライフラインにおいては、断水世帯が約53パーセント、停電世帯が約41パーセントと想定されています。