御勅使川旧堤防(将棋頭・石積出)は南アルプス市の石積出一番〜三番堤と六科将棋頭、桝形堤防、韮崎市の下条南割将棋頭で構成されています。石積出は御勅使川扇状地扇頂部に築かれた、扇状地全体を守る要の堤防です。現存する一番堤~五番堤の内、一番堤~三番堤が史跡に登録されています。
徳島堰(登録記念物)は御勅使川の地下を暗渠で横断していますが、六科方面に水を送るためには河原の中央で一度開口して水門(後田水門)を設けて分水する必要があり、この水門を洪水から守るための堤防が桝形堤防です。
将棋頭は桝形堤防で分水し、後田堰が導水した水で耕作している旧六科村の田や旧六科の集落や下流の旧野牛島、旧上高砂の集落を水害から守るための堤防です。
桝形堤防と六科将棋頭は御勅使川の治水と徳島堰の利水を兼ね備えたシステムとして機能していたのです。また、韮崎市の下条南割将棋頭も徳島堰から導水された水田を守るために造られました。
石積出と六科将棋頭は武田信玄築堤と『甲斐国志』(1814)に記述されていますが、戦国期の史料には見られず、今のところ初現は不明です。発掘調査で検出された遺構は近代の工法であり、流失しては造り変えられてきた水害と復興の歴史を今に伝えています。
データ
所有者、管理者/南アルプス市、韮崎市
指定年月日/平成15年3月25日