自然と文化が調和した幸せ創造都市 南アルプス

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移住者インタビュー

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山深い里で紡ぐ、
あたたかい時間

山深い里で紡ぐ、あたたかい時間

ご主人の仕事をきっかけに、2020年7月に南アルプス市へ移住した栗原さんご一家。市街地にある小笠原地区での2年間を経て、現在は、山深い芦安地区で暮らしています。

コロナ渦のなか、東京から南アルプスへ

栗原さん-01

栗原さんはご夫妻共に東京都出身。板橋区に建てたご自宅で、一人娘の琳ちゃんと、愛犬のライトくんと暮らしていました。
家族揃って自然が大好きで、長期休みには八ヶ岳や富士山麓に遊びに来ることも多く、山梨にはなじみがあったと話す奥様の英子さん。移住のきっかけはご主人のお仕事でした。

「主人は東京で大工をしていたのですが、2020年に、以前からお付き合いのあった古民家再生に取り組んでいる山梨の企業に、棟梁として参画することになりました。当初は単身赴任してもらうつもりだったのですが、改めて考えてみたら、せっかく自然豊かな場所で暮らせるチャンスなのに、家があるからという理由で今の場所に縛られて逃すのももったいないと。娘は当時小学校2年生。コロナ渦で制約の多い生活をしていたこともあり、家族一緒にいられる方が娘にとっても良いだろうと考えて、家族揃ってこちらに来ることにしました」。

ご家族での移住を決めた栗原さんご一家ですが、住む場所や家を探すのは、なかなか大変だったそうです。
「ペットがいることもあり、戸建てに住みたいと思っていました。馴染みのある北杜や富士五湖地域を念頭に、インターネットで不動産情報を見たり山梨へ来て見て回ったりしていたんですが、ちょうどいい物件と出会うことはできなくて…。期限も迫るなか、山梨へ来る度に立ち寄っていたオーガニック食品を扱うお店の店長さんから教えていただいたのが南アルプス市でした。それで、実際に来てみたらとても良い所で。小笠原地区にペット可の賃貸マンションも見つかったので、とりあえず暮らし始めることにしたんです。
小笠原地区は市街地で、道路が整備されていてきれいなお家がいっぱいあり、大きなショッピングセンターも近くにあって、快適で文化的な生活ができる自然豊かなまちでした。周囲の方々も良い方だし、学校も、児童数こそ半分になったものの、授業も行事も東京にいたころと何ら変わりがない。私は不満がなかったのですが、娘は『もっと自然の中がいい』と。彼女は自然のなかで走り回って遊ぶのが大好きな子なので、物足りなさを感じていたのでしょうね」。

空き家は見えるのに、借りる方法がわからない。
苦悩するなか、思わぬところで見えた光明。

その後も、小笠原地区のマンションを拠点に賃貸の一戸建てを探し続けたという英子さん。

古民家リフォームをした栗原さん宅の様子

「実は私、地方へ来たら家はいくらでもあると思っていたんです。日本一空き家が多いと言われる山梨なら、簡単に一軒家が借りられるだろうって。でも実際はそんなに甘くなかった。街を歩けばいくらでも空き家が目に入るのに、インターネットで調べても、地元の不動産屋さんを訪ねても、情報が出てこないんです。どうしたものかと思っているうちに、マンションの契約更新の時期が迫ってきてしまって…」。

そんななか、思わぬところで転機が訪れます。

「南アルプス市は、子どもたちのために様々な教室や体験の機会を提供してくれます。あるとき、市の広報誌に、市内にホースセラピーに重点を置いた「南アルプス市乗馬センター」があり、そこで引き馬や乗馬のレッスン、馬や小動物のお世話を体験できる教室が開かれるという案内を見つけ、動物が大好きな娘の希望もあって参加して、教室が終了してからも続けて通うようになりました。そんななか見つけたのが、芦安地区に新しいカフェ「アルプスtei」がオープンしたというInstagramでした。乗馬センターの近くだったこともあり、送迎のついでに『行ってみようか!』と」。気軽に訪ねたお店でしたが、オーナー夫妻と意気投合。いろいろと話すなかで、家探しの苦悩も打ち明けたと言います。
「一軒家に住みたいんだけれどなかなか見つからないと話すと、オーナー夫妻が『芦安には空き家がたくさんあるよ』と教えてくれ、空き家を管理している方にその場で電話してくれたんです。それで、直接お話をして、翌日お会いすることになりました」。

栗原さん-03

実は、芦安地区では積極的に空き家対策が進められており、そのとき英子さんが紹介されたのは、中心となってその事業を進めている方でした。おかげで翌日は話がトントン拍子に進み、空き家見学ツアーまでしてもらえたのだそう。

「初対面にも関わらず、『これから空き家ツアーしますか?』と誘ってくださり、7~8軒ほど案内していただきました。その中の一つが今の家です。その日は外見だけでしたが、見た瞬間に、娘やペットが遊んでいる絵が浮かんで、リノベーションも楽しそうだとイメージできたんですね。それで、お話を進めてもらうようお願いをしました。その後も、内見や家主さんとの交渉に立ち会ってくださるなどいろいろな面で助けてくださり、とても心強かったですね」。

一方で不安もあったと英子さん。
「ここは南アルプス市内とはいえ、辺境とか秘境とか言われる山深い里。標高も高く、冬にはマイナス20度まで冷え込むと聞きます。地域の人とうまくやっていけるだろうか、冬を無事過ごせるだろうか…。いざ住むとなると、いろいろな不安が頭をよぎりました」。

実際の暮らしを知ることで、不安を払拭。
山里での暮らしへの思いも膨らんで…

そんな不安を払拭するために英子さんがしたのが、とにかく足しげく芦安に通い、地域の人たちと話をすること。加えて「アルプスtei」のオーナーご夫妻を介していろいろな人を紹介してもらい、その暮らしぶりを見せてもらうことで、実際の生活がイメージでき、不安も解消されて、ますます芦安に魅かれていったと言います。
さらに、30年以上前に移住し、子育てを終えた今は珍しい野菜を育てながら穏やかに暮らす先輩ご夫婦を始め、価値観や生活スタイルを共有できそうな素敵な人々との出会いや、小さな集落でありながら活気が感じられたことも、英子さんの気持ちを後押してくれたそう。その後、ご主人の主導でリノベーションを施し、新学期が始まるタイミングで芦安地区に引っ越しをしました。

古民家リフォームをした栗原さん宅の様子
古民家リフォームをした栗原さん宅の様子

「リノベーションには、南アルプス市の空き家リフォーム補助金制度を活用させていただきました。幸い空き家になって2年ほどしか経っておらずトイレとお風呂はそのまま使えたのですが、築100年近い古民家なので、間取りを住みやすく変えるだけでなく、断熱材を多めに入れたりキッチンを新しくしたりする必要もあり、工事費用はそれなりにかかり、補助金にはとても助けられました。申請前の相談から手続き、支払いまで同じ担当者が親身に対応してくださり、不安なく勧められたことにも感謝しています」。

人とのつながり彩る
山里での豊かな暮らし

人との出会いがあり、家との出会いがあり、まるで導かれるように芦安に来たという英子さん。現在ではすっかり地域に溶け込み、近隣の方々と和やかな交流を深めながら、日々の暮らしを楽しんでいます。
「多くはないものの同じような子育て世代の方々が数家族いて親しくさせていただいていますし、近隣の方もみなさん気持ちの良い方で、畑で野菜が採れたからと持ってきてくださったり、誰かの家に集まってみんなで食事やお酒を楽しんだり…。玄関のカギを開けておくといろんな人が『いる?』なんて言いながら訪ねてくれるので、お茶を飲みながら会話を楽しむのも日常の一コマです。でも、決して土足で入り込んでくるようなことはなく、ほどよい距離感が保たれている。それがとても心地よく、人付き合いのストレスも全くありません」。

近所の方との交流

 

英子さんは呼吸法のインストラクター。東京の頃からの生徒さんにリモートでレッスンをするほか、ワークショップも開催しているそう。加えて、雑誌編集の経験を活かしご主人の会社のHPの記事を作成したり、せっかく山梨へ来たんだからと市内のワイナリーで醸造などのお手伝いをしたりと、人との関係が広がるにつれ、活動の幅も広がっています。

「ここはとても静かで、沢の音を聞きながら眠りにつき、やかましいほどの鳥の声で目覚める毎日。そういう環境にいるからでしょうか、前日の疲れを持ち越すことがなく、身体がすごく楽。自然の浄化パワーのすごさを実感しますし、現場に出ることが多い主人も、最高に癒されると言っています。娘が通う小学校はとても小さくて、娘の学年は全部で7人。学年性別問わず仲良くしていますし、学校中がまるで家族のような関係です。もともと自然が好きな娘はまるで水を得た魚のように生き生きと目を輝かせ、外を走り回って遊んでいます。
ムカデが出たり、大きなクモやカマドウマがいたりして最初は驚きましたが、それにもかなり慣れました。
移住する前は、山梨は閉鎖的でよそ者を受け入れないという話を耳にしたことがありましたが、そうした経験は全くなく、小笠原でも芦安でも、あたたかく迎えていただき、心地よく暮らすことができています」。これが豊かな暮らしなんだと、改めて思うと英子さん。

移住を考えている方へのメッセージをお願いすると、
「外から見ている印象と、中に入ってから見えてくる景色は全く違うので、できれば少し住んでみてから、本格的に物件や土地を探すのが良いと思います。不動産情報も、東京ではネット上にほとんどの情報が上がっていますが、地方では地元のつながりがあるからこそ得られる情報の方が多いので、地域を理解していることや人とのつながりがあることが、大きなメリットになります。
市役所に相談に行くのもおすすめです。得たい答えや情報に直結しなくても、そこに至るヒントを頂けたり、思ってもいなかった情報をご提案いただけたりして、光明が見えることがあります。市役所の方は人間味あふれていてあたたかく、リアルな言葉でコミュニケーションを取ってくださるので親近感もあって、慣れない土地で右往左往する私にとって心強い存在でした。移住後も何かと気にかけていただき、頼りにさせていただいています」と、溌剌とした笑顔で語ってくれました。

近所の方との交流の様子
近所の方との交流の様子
近所の方との交流の様子

 

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