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移住者インタビュー

移住定住インタビュー

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マウンテンバイクが
繋げる人の輪に支えられて

マウンテンバイクが繋げる人の輪に支えられて

南アルプス市の櫛形山にマウンテンバイクの走行環境づくりのために移住した弭間(はずま)亮さん。
マウンテンバイクを活用した地方創生のため日夜活動しています。

移住のきっかけ

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南アルプス市を移住先に決めたのはなぜでしょうか?

弭間さん:9年前から南アルプス市の櫛形山でいろいろな人と出会いました。その皆さんが私を受け入れてくださって、私たちも地域のお祭りや行事などのお手伝いをさせていただきながら山を活用してマウンテンバイク活動に取り組みました。マウンテンバイクは山道(トレイル)を走る遊びですから、必然的に山道に関わることになりました。道というものは、街と街、集落と集落、人と人をつなぐためにできたものですから、その過程では様々な山道に関する仕組みに直面し、様々な人々に出会い、関わり、つながりがどんどん増えていきました。

この活動が忙しくなりすぎてしまい、これ以上続けるには都会の仕事を辞め、ここに引っ越して法人を立ち上げるしかないとの結論に至りました。この地域の人にその話をしたら、住む場所を探してくれて、古民家を貸してもらいました。何年も住んでいなかった家だったので、中は凄い状態だったのですが、これも地域の人や、南アルプスマウンテンバイク愛好会の会員の方が、ご協力くださり引っ越しすることができました。

移住前との変化を教えてください。

弭間さん:引っ越してきたのが2020年。都会で仕事をしていた頃は、どんなにがんばっても月に6日か7日くらいしか、南アルプス市へ来られませんでした。でもこちらに住めば365日ここで活動できます。
活動の中で地域の人からすぐに対応して欲しいという要望が来ても、移住前はそれに対応ができなかったのですが、移住後にはすぐに対応できるようになりました。
また、様々な打ち合わせがありますが、これまではスケジュールが合わず進まなかった事案が、スムーズに進むようになりました。そして、なにより好きなことに常時打ち込めるようになったことが大きいですね。

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地域貢献活動について

地域貢献活動を行うきっかけとなったのは?

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弭間さん:人間はやりたいことができないとおかしくなってしまいます。なぜ生まれてきたかって、好きなことをやるために生まれてきたはずなのに(笑)
好きなことをやろうと思っていたら結果的に地域貢献活動になったという感じですね。
私は日本の山とか自然とか歴史が好きで、もともとは地理学を勉強してきました。特に日本の山、自然、歴史を象徴するのが、山梨県の山岳環境だと思っています。標高200mの甲府盆地から、3000m級の南アルプスの山々まであって、それぞれの植生も見ることができる多様な環境は日本ではここ山梨にしかないです。
長野県は最低標高が約1000mからになるし、それが山梨県は最低標高が200mという低さは特徴的です。しかも東京に近いことは実績づくりには大きなメリットとなります。

 

そして最高に好きなのがマウンテンバイクです。
自分のやりたいことを実現するとか、自分の好きな日本の歴史を伝えるとか、自然を伝えるにしても、マウンテンバイクというツールを通じてできます。
また、登山やスキー、スノーボードなどの興奮する要素全てを集約した遊びがマウンテンバイクであり、自分の好きなことが全部マウンテンバイクを通じて表現できてしまうので、私にとって最適な表現手段はマウンテンバイク以外にはないと感じました。

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マウンテンバイクと日本の社会環境について

弭間さん:次に日本でマウンテンバイクに乗るということが、問題がないのか疑問を抱くようになりました。法律を調べたりしてもどこにも定義されていないのです。徐々にこれはグレーゾーンだなということがわかってきて、マウンテンバイクの制度を作って日本の社会環境を整えていくしかないと強く思いました。
そんな想いを抱くとともに、ここ南アルプス市や櫛形山で市役所の方や地元の方をはじめ、いろいろな人に出会うようになって、マウンテンバイクに関わる社会環境整備をやらないかという話になりました。
どう考えても大変なのはわかっていましたけど、やらないと日本でマウンテンバイクができなくなるという使命感と自分が好きなことを広めることもできなくなるという危機感からこの活動をはじめました。
何より、好きなことをやっている大人が子供や若い世代に対して、それがグレーゾーンだからあまり口外しないようになんていうカッコ悪いことを教えるようじゃ、そういう次世代が育ってしまい、日本のアウトドアの未来は無いなと思ったからです。カッコ悪い嘘つく大人にだけはなりたくなかったんです。

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活動を続けていく上で考えたことは?

弭間さん:マウンテンバイクの社会環境を作っていくために何が必要なのかを考えたときに、地域の人に受け入れてもらうことが必要だと思いました。そしてその受け入れ体制を広げていくというプロセスが重要です。
まず、山の使用許可をいただくことが必要になります。その使用許可をいただくためにいきなり僕たちがマウンテンバイクに乗って、ヘルメットをかぶって行ったら怪しまれるじゃないですか(笑)。地権者、管理者など、関係者はたくさんいるので、まずは地域の方々にご賛同いただくために地域活動をやることにしました。

そのために、山の文化について、自分でも書物などで勉強をし、地域の方々といろいろと話をしていくうちに高尾穂見神社の夜祭のお手伝いをはじめることになりました。
お祭りにはいろいろな人が参加するので、その麓の平岡地区の人と話をすることもでき、結果として信頼を得て山を使っても良いよという話になっていきました。
あくまでもギブ&テイクではなく、私たちが地域に感謝しています、地域が好きですということで地域活動をやらせていただくようになったら、山を使わせていただけるようになってきたという感じの地域活動ですね。

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現在はどのような活動をされているのですか?

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弭間さん:今では山林防犯パトロール、山道整備、お祭りの手伝い、清掃活動の手伝いの他、平岡地区のおばあちゃんが集まる会「平岡まめちゃん」でおばあちゃんたちに活動報告をするようになりました。
地域のおばあちゃんが集まる会では最初は、僕らが来るだけで刺激になるから何をしても良いよと言われていたのですが、せっかくだからおばあちゃんたちが聞いたことも見たこともないようなマウンテンバイクの話をしました。するとみんなの目が輝き、写真を見てものすごく喜んでくれました。そこで半年に一回、マウンテンバイク活動の報告をするようになりました。南アルプス市内で今一番僕たちの活動を理解してくれているのはこの集落のおばあちゃんたちです。

 

山間部では、若い人が出ていって、人口減少し衰退していくのが当たり前です。そこに都会の人が来ているという状況。マウンテンバイクに乗っている人は若年層もおり、そういう人たちと地域の人が直に接することができるようになりました。そうすると地域の人も半年に一回の報告会で考え方がアップデートされて変わっていきました。
今では、地域の自治会の清掃活動で、マウンテンバイク隊として活動し、しかも一番大変なところを任せられるようになっています(笑) 
でも自治会の活動で、また地域の人たちと一緒に活動をすることで、あいつらいいやつだと話が広まっていく良い循環ができています。

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2019年には南アルプス市でマウンテンバイクの世界的なトップブランド「スペシャライズド」の一大イベントが開催されました。その時の苦労はいかがでしたか?

弭間さん:この開催にあたっては、半年以上前から準備を進めました。
日本の山はすごく特殊で地権者や管理者がいて、いろいろな法律が絡みあっています。逆に日本の山道に関する法律はほとんどなくて、その利用などもグレーゾーンになっています。これは山に関わるアクティビティ全般に関わる問題でした。
山や山道の在り方は、マウンテンバイクだけでなく、登山、トレイルランニングなどにも影響を及ぼします。これからこういったアクティビティをより普及させていこうと考えた場合に、避けては通れない日本の課題です。
現状、それを解決するためには、地域や行政と連携しながら進めていかないと、山で走れるようにはなりません。このように手間のかかる国は他にはまずなくて、海外のマウンテンバイカーやトレイルビルダー(※1)には想像がつかないような活動をしています。
海外の人にマウンテンバイクのトレイルのために、祭りの手伝いをしているとか、おじいちゃんおばあちゃんと話をしている、消防団と酒を飲んでいると言うと、簡単には理解してもらえないのですが、丁寧に説明していくと、その活動の意義に共感してもらえるという感じでした。

※1「トレイルビルダー」とはマウンテンバイクやトレイルランニング、登山などで利用する山の道をデザインし作り上げていく仕事を担う者のこと。この山の道は「トレイル」と呼ばれる。

スペシャライズド社からの熱烈なアプローチを経て、2019年にスペシャライズド社のグローバルプログラムである「Soil Searching」というイベントをこの南アルプス市の櫛形山にてアジア初開催しました。
この「Soil Searching」というプログラムは、マウンテンバイクに乗ったり、マウンテンバイクを販売して生業としていられるのは、マウンテンバイクで走行可能な環境やトレイルがあるからだよね、その環境やトレイルって誰かががんばって作って維持管理してくれているよね、その人たちのおかげだけど陽の光が当たっていないからスポットライトを当てて応援する必要があるという考えのもと生み出されたグローバルのプログラムです。
100名以上が参加し、3時間でマウンテンバイクが走るためのトレイルを作り上げ、そして、そのイベントで私がアジア唯一の「グローバルトレイルアンバサダー」となりグローバルサポートを受けさせていただくことになりました。

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これからの展望について教えてください。

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弭間さん:この活動をやらせていただける環境があるので、ここに移住してきました。この活動をもっと拡大していくことができれば、私は満足です。
既に南アルプスマウンテンバイク愛好会のメンバーの何人かは、ここ南アルプス市に移住してきています。あとは会員制ということもあって、メンバーのみんなもよく来てくれているのですが、これは関係人口の増加ということになります。
今後、よりフィールドが拡大したり、より受け入れやすい体制ができたり、全国に先駆けてマウンテンバイクの制度ができれば、もっとたくさんのマウンテンバイクの愛好者が走れるようになります。そうすれば、そのために移住する人も増えるので、南アルプス市、山梨県への移住促進の一翼を担うことができます。

そのために、南アルプス市役所や山梨県庁に陳情や打ち合わせや手続きを進めています。これは全国で初のチャレンジなので、行政の立場としてはすごく難しいことだと思いますが、そこをなんとかご協力いただいて、物理的なフィールドやソフト面での環境整備にしっかりと取り組んでいきたいです。そして、日本の先進事例となっていくとともに大手を振って移住者、最先端のアウトドアスポーツをする人を受け入れられて、地方創生の先進地となるような、そんな街にしていきたいです。

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